今ではもう、どうしてその話になったのかも、覚えていない。


***


今年も12月に入って、歳を重ねる度に1年は短く、早く過ぎさっていく事を知る。

神奈川に越してきて、はや5年。
色々なものを得て、反対に色々なものを失った。

忙しく過ぎていく日々の中で、たわいもない会話のふとした瞬間に、それは発覚する。






同僚の藤本が放った言葉。


ぼやけて思い出せないが、「ピクルス」という単語だけが僕の耳にはっきりと残った。


藤本「佐藤さん、ピクルスって何だか知ってるんですか?」

僕「あれでしょ?あの、ハンバーガーとかに挟まれてるやつ」


極々当たり前に、というか、そこ以外に存在を見たことが無い。


藤本「あー…まぁ…」



…"あー…まぁ…"…





…この腑に落ちない反応は何だ。

「ピクルス」とは何か。
そもそも、ピクルスなんて僕の中で普段耳にしない単語のひとつで、ハンバーガー以外に結び付くものが存在しないものだった。

その問いに"ハンバーガーに挟まれてるやつ"でこの反応という事は、「ピクルス」とは"ハンバーガー以外のものにも挟まれているやつ"、という事なのだろうか。



思い出せ。





ピクルスとは何だった?





どこにいた?






味。






色。





存在。











思い出せ。






思い出せ、思い出せ、思い出せーー











***










ググった。


そこには想像だにしていなかった文字。


『ピクルス は漬物のこと。ただし日本では、主に欧米風のものを指し、日本風の漬物やキムチ、ザーサイなどはピクルスとは呼ばない。picklesは複数形で、漬物の意味では複数形を使う。 代表的なピクルスは、塩漬けにしたキュウリなどの野菜を、酢、砂糖などからなる漬け液につけ込んだもの。』



僕「…つ…漬物…だと…?」



良く、「ピクルス抜きで」という言葉を耳にする。「牛丼 つゆだくで」の類義語だとばかり思っていた。

















パプリカだった。

僕が今まで思いこんでいた「ピクルス」とは、紛れもない、「パプリカ」だった。

限りなく「パプリカ」なものを、間違いなく「ピクルス」だと思いこんでいたのだ。



僕の脳には、深く、深く刻まれた。
藤本の見下した眼差しと、尾形の苦笑いとともにーー




















ーー世界には、まだまだ知らないものがある。溢れている。

パプリカとピクルスの違い。

たったそれだけの事かもしれないけれど。












『ピクルスの真実』完


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恥ずかしー!!!!
明日は出陣式の音響と、明後日はディナーショーの音響です。

久々の高橋さんとの仕事!
楽しみー



終わり。